依存症

依存症特定の行為を繰り返し体験することで、肉体的・精神的に依存し、自分の意志だけでは抜け出せなくなった状態を依存症と言います。
アルコール依存、薬物依存、ギャンブル依存などが良く知られていますが、近年ではインターネットへの依存、スマホゲームへの依存なども見られます。
ご自身、またご家族が治療を受ける場合には、「本人がやめたいと思っていてもやめられない状態である」ことを理解する必要があります。重度の依存症治療には、専門家、医師のサポートが不可欠です。

アルコール依存症

長期にわたってアルコールを摂取することで、アルコールなしでは気分転換ができない、気分が晴れないようになり、さらに大量のアルコールを求め、それなしではいられなくなるのがアルコール依存症です。

症状や特徴

  • 飲酒していないとイライラする、不安になる
  • 寝酒をしないと眠れない
  • 吐き気、嘔吐
  • 幻覚(虫が身体を這うなど)
  • 集中力・注意力低下
  • 動悸、息切れ
  • 血圧上昇
  • 脳の萎縮
 二次的な悪影響も
  • 社会的信用の喪失
    仕事があると分かっているのに出社前に飲酒をしたり、ひどい場合には仕事中に周囲の目を盗んで飲酒したりすることもあります。解雇などの処分、離婚につながることもあり、社会的にも大きなリスクを伴います。
  • 耐性による酒量の増加、症状の悪化
    飲めるだけ飲むということを繰り返していると、アルコールに対する耐性ができます。いわゆる“お酒に強くなる”状態です。アルコール依存症の方の目的は酔うことですので、必然的に酒量が増えます。酒量が増加することで、身体への負担が大きくなり、症状も悪化します。
    「このままでは命を落としますよ」と医師に宣告されても飲んでしまうことがある。これが依存症のおそろしさです。
  • 大切な人を裏切ることに
    配偶者、子供、親戚、恋人、友人など、たとえ依存症に理解がある人であったとしても、「飲まないと約束したのに飲んでしまった」「治療を途中で投げ出してしまった」ということをあなたが繰り返していては、やがて離れていってしまいます。そのことで自暴自棄になり、さらに依存が強まり、最悪の事態に陥ることもあります。

離脱症状よる悪循環

最後に飲んでから時間が経過し、体内のアルコール量が低下したときに起こるのが離脱症状です。
手の震え、喉の渇き、悪寒、イライラ、不安、焦り、睡眠障害、寝汗などがこれにあたります。アルコールを摂取するとこれらの離脱症状が一時的に治まるため、我慢できずに飲んでしまい、だんだんと離脱症状が悪化する・間隔が短くなる、頻繁に大量にアルコールを口にしてしまう、という悪循環に陥ります。

診断

下記のような症状を認めており、医師による診察を経て診断に至ります。

  1. お酒を飲めない状況においても、飲酒したいと強く感じたことがある。
  2. 自身の意志に反してお酒を飲み始め、予定より長くまたはたくさん飲み続けたことがある。
  3. 飲酒量を減らしたり、飲酒をやめたりしたとき、手の震え、汗をかく、眠れない、不安などの症状が現れたことがある。
  4. 飲酒を続けてお酒に強くなった自覚がある、または高揚感を得るために必要な酒量が増えた。
  5. お酒を飲むために、仕事、付き合い、趣味、スポーツなどの大切なことを諦めた、または大幅にその機会を減らした。
  6. 飲酒による心身の病気があり、かつその病気がお酒の飲み過ぎだということを知った上で飲酒を継続した。

治療法、処方薬

まずは通院しながら患者様とアルコールについて一緒に考えます。なぜお酒を飲むようになったのか、どういったときに飲みたくなるのか、どのような役割を果たしていたのか、どのような良いこと・悪いことがあったのかをゆっくりと話し合い、整理します。
その上で、必要に応じた薬物療法を行います。肝機能改善薬やビタミン類、離脱症状を軽減する向精神薬、アルコールの分解を抑える抗酒剤、断酒補助剤などを選択的に投与します。

アルコール依存症は死に至ることも…

アルコール依存症、つまり日常的に大量の飲酒を続けることは、身体を傷めつけ、他の病気のリスクを高めることになります。肝臓病や糖尿病などがその代表的な病気です。肝硬変が肝がんへと進展したり、糖尿病が命にかかわる合併症を引き起こすこともあります。また、酩酊状態で川や線路に転落したり、真冬の路上で倒れたりといったことで死に至ることもあります。
飲酒が習慣化している方は、「付き合いで――」「ストレス発散のために――」と始めた飲酒が、依存症になることで命にかかわる病気・事故のリスクを高める、ということを理解しておく必要があります。

薬物依存症

シンナー、覚醒剤、大麻、コカインなどの違法薬物、あるいは合法薬物の乱用をやめたいのに、自分をコントロールできずにまた手を伸ばしてしまう状態を、薬物依存症と言います。

原因

薬物を使用することで脳の神経系に異常をきたし、神経伝達物質ドーパミンが大量に発生します。このドーパミンにより強烈な快楽・多幸感がもたらされ脳に記憶されるとともに、再び大量のドーパミンを欲する脳へと構造を変化させます。

症状

  • イライラする、落ち着きがない
  • 感情の起伏が激しい
  • 食事、睡眠なしに活動し続ける
  • 妄想を抱き、暴言を吐いたり、暴力をふるったりする
  • 過剰摂取(オーバードーズ)により死にいたることも
二次的な悪影響も

症状や使用の発覚により職場、家庭などでの信用を失い、解雇や離婚に至ることもあります。
また、違法薬物は所持や使用そのものが違法ではありますが、気づかれずに使用を続けているうちに、本来であれば自分で抑止できるような傷害、窃盗などに手を染めてしまう可能性も高くなります。

診断

脳がどれほど依存しているかというよりも、その人の生活がどれほど依存しているかの確認、薬物によってどのような逸脱行為をしているかの確認が重要です。

治療法

薬物使用を中止し、薬物が完全に体内から排出されたあとも、薬物への渇望が消えることはありません。つまり、糖尿病や高血圧症などの他の病気と同じように、完治することはないのです。
薬物依存症の治療では、薬物を“やめ続ける”ことが重要になります。それには、ただ「やめよう」と強く決意するだけでは不十分です。薬物を意識しすぎることで、再び強い欲望に襲われ、手を出してしまうケースも少なくありません。自分一人で薬物依存症に打ち勝つことは、ほぼ不可能と言えるでしょう。
薬物に手を出してしまった自分・未だ薬物を欲する自分を認め、一方で薬物をやめるために自分をコントロールする術を身につけるために、そういったプログラムや自助活動に参加することもひとつの方法になります。
完治はしませんが、社会生活上まったく支障のないレベルまで回復することは、十分に可能です。
※当院では薬物依存のプログラムなどは実施していませんので他の医療機関や施設をご紹介することも可能です。

依存症Q&A

夫が毎日お酒を飲んでやめられないのですが、これはアルコール依存症なのでしょうか?

アルコール依存症とは「お酒がコントロールできなくなった状態」です。いわゆるお酒が好きな人とは下記のような点で異なってきます。
周囲からお酒を減らすように言われても飲んでしまい罪悪感を感じたり、以前と同じ量では満足できなくなり飲む量が増えたり、朝から飲むようになったり、仕事など生活に支障が出る、手が震えるなどの離脱症状がみられる場合に診断されることがあります。

アルコール依存症は他の精神疾患と合併することはあるのでしょうか?

アルコール依存症の方はうつ病などの精神疾患の合併率が高いと言われていますが、そもそも他の双極性障害やADHD、不安障害などの精神疾患がアルコール依存症を合併しやすいと言われています。アルコールが一時的に病気の症状を和らげてあげることが原因と言われていますが、根本的な解決にはならないため原疾患の治療と共にアルコールの問題についても話し合っていくことが重要になってきます。

依存症になりやすい人の特徴は何ですか?

依存症になりやすい人というとルーズでだらしない人というイメージが思い浮かぶかもしれません。しかしながらそういった性格だからといって必ずしも依存症になるわけではありません。逆に真面目で責任感が強い人はストレスをためやすくストレス発散の手段としてアルコールを飲む量が増えることがあるため注意を要するともいわれています。
したがって依存症は誰にでもなる可能性はあります。
依存症は安心して人に依存できないから物質に頼ってしまうとも言われており、安心して頼れる人や場所を増やすことが大事だとも言われています。依存症は病気なので専門的な治療が必要です。依存症かなと心配になることがあれば一度相談頂ければと思います。

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